無痛でつらくない大腸内視鏡挿入法に関するご質問、Q&A、悩みの相談 of 福岡の大腸・肛門科専門医による痔・肛門科・大腸内視鏡(大腸カメラ)のサイト 大腸肛門武者修行

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ここでは大腸内視鏡をマスターしようと日々研鑽されている先生方からの挿入法に関するご質問に本音でお答えします。

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大腸内視鏡挿入法のQ&A

セデーションができない環境のため、ループ形成解除法か、軸保持法か、で迷っています

二木会流(ループ形成解除法)か軸保持か、なかなか難しい問題です

僕はまだ経験の浅い時期に鈴木塾で二木会流のトレーニングを受けました。
ほぼ五年間、毎週鈴木先生の薫陶を受けることができる幸運のおかげもあり、
横浜を去る頃には、松島クリニックの環境(オピスタンあり、セルシンあり、最高の前処置)では盲腸到達率は99.8%で、患者さんも当然苦痛は皆無で、時間も3分を切るようになりました。

その後、転勤したのですが、そこは環境が大きく異なり、(ストレッチャーなし、パルスオキシメーターなし、オピスタンなし、セルシン制限あり、前処置は普通レベル)スランプに陥りました。理由はやはり一部の患者さんの痛みでした。
その施設では、検査終了後に痛みのアンケートをとって、それが医師の評価の一部になっていたので、僕も気持ちを切り替えて、挿入時間は気にせずに、いかに痛みを感じさせないで挿入するかに、自分の目標を変えました。
その後、約半年かけて今の環境に最も適した挿入法を試行錯誤した結果、フードをつけて、前半は無送気でいくスタイルにおちつきました。この方法で患者さんの痛みはほとんどなくなりましたし、到達率も100%でした。

僕のイメージでは、二木会流と軸保持法は二者択一でありません。
松島のような最高の環境では、僕はSトップでどちらの挿入で行くかを決めていました。
また、一般的に、誰でも苦労なく前半をストレートで挿入できる(軸保持でいける)低難度の症例もあれば、一方、S状結腸や横行結腸が長くて、ループを作らざるを得ない高難度の症例もあります。二木会流をマスターすることは後者のような高難度の症例への対応を強くするのではないかと思います。その結果、盲腸到達率を高めることができると思います。(挿入時間は二次的な指標にすぎません)

そして、中程度の難易度の症例(時間をかければ軸保持でいけないことはないけど、二木会流でいけば簡単に入る)をどう挿入するかは、環境と内視鏡医のポリシーによって選択されるものだと思います。

sedationなしの環境は大変だと思いますが、そのような環境で苦痛を少なくする(痛みに対する受容を高める)ように僕が気をつけていることは、
(1)絶えず患者さんに声をかけて安心させる
(2)痛みの出るポイントでは前もって予告をする
(3)患者さんの痛みのサイン(表情も含めて)に敏感になる
(4)送気は少なめ
(5)押しも少なめ
(6)時間は気にせず
  です。

追伸:現在勤務している福岡山王病院では、通常セデーションを用いて二木会流で行っていますので、痛みも皆無で短時間の検査が可能です。

Sトップのとらえ方を教えてください

Sトップのとらえ方ですが、
(1)トップの曲がりを右下にとらえれる時は、ヒダをめくるように越えて、その後もストレートでいく(軸保持)
(2)トップが12時になるときはアップの押しで越えて、ループ形成でいく(二木会流)
で前半を組み立てています

松島病院にいるときはセデーションがしっかりしているので、まず(1)をトライして、だめならすぐに(2)に切り替えていました
その結果、(1)は30-40%、(2)は60ー70%ぐらいだったと思います

一方、くるめ病院ではセデーションが不十分で(2)の挿入で痛がられるかたがいるので、なるべく(1)になるように粘ってみて、つまり次の管腔が右下にくるように粘ってみて(工夫として、無送気で開始し、用手圧迫をつかったり、体位をかえたり、時間もかけて)それでもだめだったら(2)に変更していました
その結果、(1)は70-80%、(2)は20-30%ぐらいだったと思います

二木会流では、(2)がわかりやすい挿入なので、まず(2)をファーストチョイスするというのが鈴木康元塾長のお考えだと思います
逆に無送気フードによる”優しい軸保持”にこだわっている辻仲病院の赤木先生(かなり上手ですが)などは、時間を気にせずに頑張られて、95%ぐらい(1)でいくそうです

SDを超えた後、Dで抵抗が強くすすまない時の対処は? 

SDをなんとか超えたもののDでの挿入に抵抗が生じてスコープの先端に力が伝わらなくなることが時々あります。
原因は腸管自体の難易度の問題か、それまでの挿入(RからSの下りまで)に問題があったかの、またはその両方かもしれません。
対処法としては(1)いったんスコープをSまで引き戻し、再度挿入を試みるか、(2)Dにスコープの先端を維持しつつ力の伝わりの回復を図る、の2通りがあります。

このテーマについては、二木会兵庫支部会でも取り上げられ、師範の先生たちの中でも(1)か(2)かで意見が分かれる結果でした。
僕はまず(2)を試みるようにしています。
難易度の高い症例の中には脾湾曲に達する手前に引きの操作(短縮化)を行わないといけないものがあると思います。
効果的な引きの操作は屈曲部を支点にした時にやりやすいものです。
屈曲が強くなったSDをなんとか超えた後にDがすすまない時は、Dからスコープの先端が抜けないように注意しながら、SDを支点にして短縮化を図り、スコープ先端への力の伝わりの回復を図るようにしています。

実際の短縮化の方法は、”スコープが抜けない方向に引く”の一言に尽きます。
実際はまず右の引きが有効な場合が多いと思いますが、左の引きが有効な場合もありますし、Sがかなり長くて左右に振りながら入っていった症例などは引きの操作も左右が必要になるかもしれません。

ただ自分の引きの技をすべて駆使しても解決できない時は、潔くRまでファイバーを抜いて仕切り直しをしたほうがいいかもしれません。

内視鏡先端フードは使ったほうがいいでしょうか?

まず一般的なフード使用の長所と短所を考えますと、

メリットとして
①腸管粘膜との距離感が保たれることで、次の管腔方向の認識が容易になる
②赤玉にもなりにくいので穿孔などの合併症は減る可能性がある
③ヒダ裏の観察に優れている
④視野をとりにくい病変の治療(ポリペクトミー、EMRや止血クリッピング)に有用である
などがあると思います。

逆に、デメリットとして
①観察の視野が狭くなる(フードの長さによりますが)
②便塊がフード内にはまりこむとなかなかとれない(したがって前処置の悪い症例では使えない)
③フードで粘膜を傷つけてしまう危険があるがあると思います。

ちなみに個人的には、
二木会流の挿入(ある程度送気を行う)の時はフードは必要としないので使いません。

無送気軸保持短縮法を行うときは、送水とフードがないと次の管腔を見つけるのはかなり厳しいので、フードは必ず使用します。

ただし、治療内視鏡の場合は挿入法やセデーションに関わらず、使用した方がいい場合があることは言うまでもありません。

横行結腸でSがのびてファイバーが進まない場合の対応は?

これは無送気よりも二木会流でする時に多いのですが、前半で大きなループを作って入った場合は、脾彎曲でストレート化しても、横行結腸でまたのびる事があります。

その場合はもう一度脾彎曲部までもどってストレート化をやり直し、再度のびないように工夫します。
対処法は以下の6通りで、
①右トルクを強めにしてファイバーをすすめる
②可変機能があれば硬度を硬くする
③下腹部を用手圧迫する
④深く息を吸ってもらう(脾彎曲を下げて鈍角にする)
⑤体位変換を行う(仰臥位や右側臥位にする)
⑥スライディングチューブを使う

もしこれでものびるときは、横行結腸中央部まで何とか挿入してMTの曲がりに先端をひっかけて短縮化を行います。

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